居酒屋の中に生まれたケーキ店
薩摩川内市西向田町『洋風酒場 NEW STYLE KITCHEN ToRoRi』の店舗内に
『名もなき小さなケーキ店』はあります。
なぜ居酒屋の中にケーキ店?
そう思う方がほとんどです。
居酒屋の中に誕生したケーキ店のストーリーをご紹介します。
1.夢の始まり
“つっちー”の愛称で親しまれるパティシエ、土川真弥仁。
薩摩川内市出身、電気科の高校を卒業後、
祖父の逝去をきっかけに自分のできることを探して
進学した介護科のある専門学校でのこと。
ある日介護実習先で利用者の方から言われました。
『夢に向かって頑張ってね』
自分の夢って何だろう?
夢について考えるようになりました。
その頃放送していたあるドラマ、
手先の器用な職人技に心打たれ、決意しました。
“パティシエになる。”
パティシエへの道がスタートしました。
2.成功と挫折と
専門学校を卒業後、通信制のパティシエ専門学校に入学し
1年間学んだ後、鹿児島市内にあるケーキ店に就職しました。
計量と皿洗いから始めて4年半、介護実習先で言われた一言を胸にコツコツと積み重ね、
そして、先輩からケーキの作り方を教わりました。
ケーキ店やホテルだけでなく、ほかの場所で違った角度からも学びたくて、
カフェでも1年ほど働きました。
そしてさらに4年半、あるホテルで働き、ウエディングケーキも手掛けられるようになり、
2018年に鹿児島市内にケーキ店をオープンさせます。
しかし程なくして訪れた新型コロナの世界的な蔓延…
誰も予想が出来なかった時代に入り、やむを得ずお店を閉めることに。
「挫折」を経験し、そのケーキ店は名前を失ってしまいました。
3.たくさんの想いに支えられ
ケーキ店を閉めることになり、一度ケーキから離れはしましたが
前向きさは失わず、自分の中に新しい何かを取り入れたくて
様々な仕事を掛け持ちしました。
ファミレス、パン屋、農業、居酒屋…
その中の1つが薩摩川内市西向田町『洋風酒場 NEW STYLE KITCHEN ToRoRi』。
そこには頼りがいのある幼馴染がいました。
ToRoRiオーナー 関口聡浩、幼稚園からの付き合いです。
居酒屋料理や経営等に詳しく、コロナ禍でもアグレッシブに
「楽しみの場の提供」を目指したお店作りを続けてきたオーナーと、
人前に出るのが苦手でケーキ以外の料理や宣伝の仕方等、得意ではなかったけれど、
挫折をしても情熱とひたむきさを持ち続けてきた元パティシエ。
一見、でこぼこに見える2人ですが、
それぞれが得意なこと、不得意なことをカバーし合い、
思ったことを気軽に言える最強のタッグが誕生しました。
周りにはさらに2人を支える心強い仲間もいます。
ある時、オーナーから出た一言
『せっかくの技術があるのにもったいない』
そこからわずか1か月、
ケーキ店とは使い勝手の異なる居酒屋のキッチンで試作を重ね、
2021年9月12日に「洋風酒場 NEW STYLE KITCHEN ToRoRi」の店舗内に
新たなケーキ店をオープンすることになりました。
そのお店こそ
『名もなき小さなケーキ店』
一度は名前を失ったケーキ店が
名前を取り戻す挑戦が始まりました。
4.“ケーキ一つで笑顔に”
居酒屋の中に誕生した異色のケーキ店で
色んな人の意見をもらいながら
再びパティシエとして真摯に丁寧にスイーツに向き合う日々。
昼間ケーキを買いに来て下さる常連のお客様や
飲み会の後に家族へのお土産として購入して頂く男性のお客様も増え、
いつしか色々な方々から取材を受けるようになりました。
そんな中、さらに嬉しい出来事が起こります。
泣く泣く閉めたあのケーキ店のお客様が偶然テレビの報道を見て、
わざわざ鹿児島市から買いに来てくださったのです。
またパティシエとしてケーキ店をやって
よかったなと思った瞬間でした。
悲しみも成功も挫折も人の温かさも
すべて味わったからこそ作れるケーキがある。
“ケーキ一つで笑顔になってほしい”
オープン当初から変わらない純真な想いで
お客様の笑顔を想像しながら、
今後も取り組んで参ります。